応援企業007
島根中央信用金庫

「育休を取らないのが恥ずかしい時代が必ずやってくる」
理事長からのトップメッセージと10年先を見据えた戦略。

淀谷 友加さん

人事部 部長

目次
  • 理事長自ら旗振り役に
  • 昭和の価値観からの転換と「10年先を見る」方針
  • 自身の経験から生まれた制度への思い
  • 育休を当たり前にするための「三段階」の推進プロセス
  • 女性がキャリアを諦めない組織へ
  • 採用難を打破し、離職・メンタル不調ゼロを実現した好循環

理事長自ら旗振り役に

岩本アナ
今回、平田支店の山本さんは出生時の「産後パパ育休」と、通常の育児休業を組み合わせて計3回育休を取られるそうですね。御庫ではこうした複数回取得が主流になってきているようですが、パパ・ママ育休プラスといった制度についても、かなり従業員向けに案内を徹底されたんですか?
淀谷さん
最初の作り込みで言いますと、まずは当時お子さんが生まれたお2人の方に、人事から直接「育休を取ってほしい」とお願いしたのが始まりです。「2、3日でもいいですから」と。その後に、やはり金融機関はどうしても男性社会なので、全体に浸透させるにはトップメッセージが一番早いと考えました。なので理事長にお願いして、年4回の支店長会議という管理職が集まる場で、繰り返し発信していただいたんです。
岩本アナ
理事長さんが自ら!どのようなメッセージだったんですか?
淀谷さん
理事長は「この先、育休を取らないということ自体が恥ずかしい時代が必ずやってくる。だから、もう必ず取ってください」とはっきりおっしゃいました。すぐには浸透しないので、支店長会議がある度に、毎回同じメッセージを刷り込むように、もう何度も何度も、毎回同じことを伝えていただいたんです。
岩本アナ
へぇー!もともと理事長さんもそういう思いがあったんですか?
淀谷さん
いえ、やはりそういう時代の方ではないので。当然、昭和の、男性が残業ありきで働くという中を生きてこられた方ですから、最初は正直「どうなんだ?」という反応でした。
岩本アナ
男性が育休を取るなんて、という戸惑いですね。
淀谷さん
そこは人事の方で何度も話し合いを重ねて、「今はそういう時代ではない」ということをしっかり理解していただいて。最終的には理事長自ら旗振り役になっていただきました。

昭和の価値観からの転換と「10年先を見る」方針

岩本アナ
淀谷さん自身も、理事長さんと並走して取り組んでこられたんですね。女性の人事部長ということで、やはり特別な思いもあったりするんですか?
淀谷さん
私は今年(2025年)の4月に人事部長を拝命しましたが、その前はずっと男性の人事部長の下で2番手として働いてきました。そこでいろいろと対話をしながら進めてきた形です。
たぶん・・・私もかなり意見を言っていたんだと思います(笑)。
岩本アナ
淀谷さん自身のキャリア形成において、何か感じる部分があったのでしょうか。
淀谷さん
私自身、子どもが1人いるんですが、子どもが小さい頃は今とは違って「男性と同じ働き方をしないと認められない」という強い思い込みがあったんです。だから子どもを両親に預けて出張にも出かけましたし、男性と同じ働きぶり、もしくはそれ以上やらなければならないと、とにかくがむしゃらでした。私は近くに頼れる両親がいたので頑張れたんですが、最近は両親と離れてアパート暮らしで孤立しがちな方も多いですよね。
岩本アナ
確かに、生活形態が変わっていますよね。
淀谷さん
そうなんです。そうなると、企業が育休も含めてしっかりサポートしていかないと、女性がキャリアを諦めてしまうということになりがちなので。
男性職員にもその状況を理解していただくと、女性職員に対する見方も変わるのではないかと考えました。
うちの基本方針は「人に対する施策は10年先を見る」なんです。10年先の未来にどうなるかを考えて今何をすべきか。
金融機関は今、業界全体的に人気がなくて応募が少なくなっているので、女性を含めみんなに活躍してもらわないと生き残れないというのは目に見えていましたから。

自身の経験から生まれた制度への思い

岩本アナ
淀谷さん自身、お子さんを預けてがむしゃらに働いてきた中で、今振り返って違和感や後悔のようなものはありますか?
淀谷さん
その時は必死だったので気づかなかったんですが、子どもが成長して中学生や高校生になった時に、愛情が伝わりきっていなかったのかなと感じる場面が多々あってですね。 高校入学くらいの時に、子どもから「お母さんはこっちを見てくれていない」というようなことを言われたんです。「ああ、そうだよね」と、ハッとさせられました。
岩本アナ
お母さんとしては、仕事も子育ても頑張っているつもりでも。難しいですよね。
淀谷さん
そうなんです。だからやっぱり、男性も女性も同じように育児に関われたら、女性も仕事に向かいやすいし、より子どもとの時間も大切にできる。
ちなみに、私が当金庫で育休を取った第1号だったみたいなんですが、半年間の休みを取る際も「権利ではあるけれど、当然のように言わないようにね」と釘を刺されるような時代だったんですよ。女性が取得するのにもそういう声があった。
岩本アナ
ましてや男性なんて、という空気感だったわけですね。それが今はここまで変わったと。
淀谷さん
はい。この5年で、正直こちらが戸惑うくらいがらっと変わりました(笑)。 以前、県主催のセミナーで、「日々どんな家事をやっていますか?」という家庭での家事分担を振り返る表を記入してもらったんですけど、管理職はほぼ奥様任せだったのに対し、若い職員はもう半分以上分担していたんです。そのギャップを明確に突きつけて、管理職には「土日くらい簡単なものでいいから食事を作ってくださいね」とアドバイスしたこともありました。

育休を当たり前にするための「三段階」の推進プロセス

岩本アナ
制度をここまで定着させるために、当初はどのような苦労がありましたか?
淀谷さん
まず一番初めに育休を取ってほしいと伝えた時に必ず出たのが、お給料が減ってしまうことへの懸念でした。そこで第一段階として、給付金制度を丁寧に説明し、実際の手取りはそんなに変わらないことを伝えました。
第二段階として、うちには3日間の特別休暇制度があるので、「まずこの3日間は丸々お給料が出るから休んでください、そこに1日でいいから育休を付けてください」とハードルを下げたんです。
岩本アナ
1日からでいいなら、と。
淀谷さん
人事がそこまで言うなら、ということで最初は渋々でしたが、そうやって実績を作っていきました。
そして第三段階として、育休をキャリアのプラスとしても捉えてもらうことです。育児を経験することで人として価値観が変わるし、将来的に支店長になる上でも絶対にプラスになるよ、という期待を伝えてきました。家庭がうまくいくことは、仕事のパフォーマンスにも直結しますから。

女性がキャリアを諦めない組織へ

岩本アナ
男性社会というお話もありましたが、男性の育休推進によってそのあたりの風土も変わってきましたか?
淀谷さん
それで言うと、最近の学生は意外と男性・女性の差をあまり感じてないんですよ。それが、「金庫に入って、急に女性であることを感じ始めました」って言う声を聞いて。これはダメだなと思ったんです。
岩本アナ
いざ入庫して、女性であることのハンディキャップを感じる場面が多かったということですか?
淀谷さん
そうですね。「急に女性扱いされるようになって戸惑ってます」と。これではダメだと思って。
うちは総合職って男子も女子も同じ職種で入るんですけど、以前はどうしても入ってから仕事が分かれていたので、そこはもう教育のプログラムを作って、誰でも同じように全ての仕事を経験するように、仕組みづくりから変えました。
岩本アナ
キャリア形成の考え方とかも変わってきているんですかね?
淀谷さん
そうですね。だから若い職員は男女の差とか違いってあんまり感じてないと思います。
岩本アナ
それこそステレオタイプの銀行の形式でいうと、女性は窓口で、男性は営業、みたいな。
淀谷さん
ありましたよね。やっぱりそうも言ってられないので。
岩本アナ
みんながマルチタスク化していかないと、という。
淀谷さん
おっしゃる通りで、私たちは「マルチスキル」って言うんですけど、女性の渉外営業係の比率は多分信用金庫業界では日本一だと思います。すごく女性が活躍してます。
岩本アナ
数字に顕著に出てきてるんですね。そうなることで、庫内の層の厚さにも繋がってきますよね。
男性しか管理職になれないと思っていた段階よりは、かなり進んでいますね。10年どころか、もっと。
淀谷さん
はい。それぞれの強みや多様な人材を認める風土が出てきた結果、管理職の女性がここ最近生まれてきています。支店長を務める女性も現在4名に増えました。
以前は育休期間が実績から引かれるのが普通でしたが、うちでは2回育休を取得した優秀な女性職員が、実質の実績期間で正当に評価されて職位を上げています。こうした「キャリアを諦めなくていい」というロールモデルを示せているのは大きいですね。

採用難を打破し、離職・メンタル不調ゼロを実現した好循環

岩本アナ
その取組が、今では採用や離職率といった数字にもはっきり表れているそうですね。
淀谷さん
はい。採用面では、育休が取れる環境というのは学生にも非常に響くようで、おかげさまで順調です。
驚くべきは離職とメンタル不調の数字で、ここ3年ほど離職者はゼロ、従業員のメンタル不調もここ何年かはゼロなんです。金融機関としては非常に珍しいことだと思います。
岩本アナ
メンタル不調者がゼロというのは、人事部としても大きな変化ではないですか?
淀谷さん
はい、心配が少なくて助かっています。他社の担当者さんに聞くと大変な話も多いので、ありがたい限りです。
育休推進がきっかけとなり、若手が増え、離職が減ることで会社全体に人数的な余裕が生まれ、さらに休みやすくなる。「いい循環」が確実にできています。
岩本アナ
淀谷さんの名刺には、多くの認定マークが並んでいますけど、これにはこだわりがあるんですか?
淀谷さん
この名刺にあるマークは、私たちの姿勢を外部に示す大切な指標です。
先日いただいた「くるみんプラス」の認定マークは、島根県で第1号だったんですよ。第1号が欲しかったので、狙いにいきました(笑)。
こうした姿勢を見せることで、従業員に金庫を大切に思ってほしい。相思相愛の状態を作りたいんです。
岩本アナ
独自の「託児」の仕組みも作られたとお聞きしましたが。
淀谷さん
はい。台風などで急に学校が休みになった時、子どもたちを金庫に呼んで、人事で面倒を見る仕組みを作りました。
ただ、まだ預けることが恥ずかしいという理由で利用が少ないんですが、いつか各支店でも当たり前に子どもを連れてこられるようにしたいです。
子どもたちが親の働く姿を見て、「将来、お父さんやお母さんと同じこの職場で働きたい」と思ってくれたら万々歳です(笑)。
岩本アナ
淀谷さんのポリシーは「コストをかけない」ことだそうですね。
淀谷さん
そうなんです(笑)。お金ですべて解決するのではなく、あくまで「お互い様」の精神。育児で休んだら、次は誰かの介護や病気を自分がサポートすればいい。
子どもを介して名前で呼び合えるような、家族のような温かいコミュニケーションが生まれる。その雰囲気が、結果的に働きやすさに繋がっていくんだと実感しています。
岩本アナ
企業は人だという言葉を、単なる理想ではなく仕組みと熱意で体現されている。島根中央信用金庫さんの姿勢に、僕も改めて感動しました!

曽田 道生さん[平田支店 支店長]

広瀬 映美子さん[平田支店 支店長代理]

目次
  • トップメッセージで変わった「育休は当たり前」の雰囲気
  • 誰もがカバーし合える「マルチスキル化」
  • 働きやすい職場は、いい人材を呼ぶ。
  • 過去の苦労と「いるだけパパ」の後悔
  • 育休取得を支える現場の寛容な雰囲気
  • エース職員の不在を乗り切る具体的な対策

トップメッセージで変わった「育休は当たり前」の雰囲気

岩本アナ
島根中央信用金庫さんでは育休の取得者が増えているようですね。
曽田さん
増えてますね。男性も2024年で100%で、今年度も現在4名が取得していて、さらにまた3名取得します。男性職員も育休を取るのが当たり前という雰囲気になってきていると思います。
岩本アナ
曽田さんが20代の時とかは考えられないような?
曽田さん
考えられないですね(笑)。
広瀬さんも同じぐらいの世代なので、そうですよね?
広瀬さん
そうですね、当時を振り返ると考えられないですね。
曽田さん
恐らく制度としては会社にあったと思うんですけど、その頃男性が育休を取るということが全く考えになくて。取った人も聞いたこともないですし、選択肢にもなかったです。
岩本アナ
当時は男性が育休を取るというとキャリアを諦めることに繋がるというような考えもあったんですかね?
曽田さん
というか、取るという意識がそもそもないですし、それが当たり前だったので。
岩本アナ
それが、理事長から育休取得を推進する方針を伝えられたんですよね?
曽田さん
はい。支店長会議というのが四半期ごとにありまして、その会議の都度都度で「育休取得を推進し、取りやすい雰囲気を作ってくださいね」というようなアナウンスをしておれらました。
岩本アナ
トップからのメッセージがしっかりとあったということですね。
曽田さん
そういうのもあって支店長たちの意識も当時と比べたらまったく違います。今はどこの支店でも、結婚しましたと報告を受けて、子どもができたら育休というのがセットになってきてますね。

誰もがカバーし合える「マルチスキル化」

岩本アナ
その理事長からのメッセージを受けて、どのように各支店で取りやすい環境というのを醸成していったんですか?
曽田さん
支店だけではなく、マルチスキル化というのを推進しています。
最初の3年間で一通り全ての職種を体験して、どこでも基礎的なことができるようにしてから、それぞれの選択をしましょうということになっています。
岩本アナ
誰もがカバーし合える環境づくりにも繋がりますね。
曽田さん
はい。それがどの支店でも進みつつあります。育休の期間が1年とかになったら話は別ですけど、1か月~2か月とかであればみんなでカバーし合える体制はおそらくできていると思います。
この支店は8人という少人数で運営しているので、1人が減れば戦力的には非常に厳しいですけど、カバーできる方法を考えて乗り切っています。

過去の苦労と「いるだけパパ」の後悔

岩本アナ
広瀬さんからしても昔と今とで働き方とか環境が変わったなというのを実感されてるんじゃないですか?
広瀬さん
もう今は、女性は育休を1年間取って当たり前で、男性もこのように取れるようになっていて、もう本当にうらやましいなと(笑)。
岩本アナ
広瀬さんご自身は、当時育休はどうされたんですか?
広瀬さん
子どもが2人いるんですけど、上の子の時は産休だけで、産後2か月で仕事に出てました。
それが結構しんどくて、2人目の時には3か月ぐらい育休を取ったんですけど、育休明けて保育園に預けたら子どもが喘息になってしまって、結局仕事を休まないといけなくなって。入院もあったので夫にも仕事を休んでもらって、交代で対応して。上の子もまだ2歳で小さいので大変で。
そういうすごく大変なことを経験したので、今そうやって育休でお子さんを見てあげられるというのはすごく良いことだなと思います。
岩本アナ
ある意味、その当時は安心して働くことができなかったということですね。
広瀬さん
そうですね。常にいろんなことが気になって・・・。電話がかかってくるんじゃないかとか。
岩本アナ
子育てに対してちょっと後ろめたさを感じながら働いていた時期があるということですよね。
広瀬さん
そうですね。職場に対しても、子どもに対しても。
曽田さん
私も子どもが2人いますが、取れるものなら取っておきたかったなと思いますよ。
1歳、2歳のちっちゃい時って大変ですけど、そのタイミングしかないですからね。
岩本アナ
どういう部分で取ってみたかったと感じますか?
曽田さん
基本的には家事も育児も妻がやってくれていたので、急に何か異変が起きた時とか、具合が悪くなった時とかにどうしようもできなくて。
「ちょっとちょっと、これどうしたらいいの?」って(笑)。
岩本アナ
いるだけパパ、みたいな。
曽田さん
本当にいるだけ、見てるだけみたいな・・・。
そういったところで、もうちょっと理解して育児できていたら、子どもとの関係性も違ったのかなとか考えますね。
今思えばそういった子どもがちっちゃい時にしかできない経験ってやっぱりありますよね。
岩本アナ
だからこそ、今の職員には「取りません」と言われても「いやいや、取れば?」って言っちゃうぐらい育休を推進されているんですよね。素晴らしいですね。

育休取得を支える現場の寛容な雰囲気

岩本アナ
今は育休だけでなく、日頃の子育ての都合に合わせた休みも取りやすい環境ですか?
曽田さん
そうですね。今は育休が明けて復帰されても、時短の働き方もありますし、周りがサポートする雰囲気が全般的にあります。
例えば「子どもが急に熱が出てお休みします」なんてことについても、「そういうこともあるよね」という寛容な雰囲気っていうのは間違いなくあると思います。
広瀬さん
女性の目線からしても、子育てや家庭のことを知ってくれる男性職員が増えるのは心強いですね。
岩本アナ
山本さんの育休後の変化も何か感じられますか?
広瀬さん
先日お客様が家族連れで来られた時に、お子さんに優しく話しかけていたり、ぐずりだした時に色々と配慮してあげてるなと思って微笑ましく見てました。
曽田さん
育休経験が、仕事のお客様との関わりにも活きていると感じます。
岩本アナ
育休から戻る時のフォローについてはどのようにされましたか?
曽田さん
育休中も、確認することがあれば連絡は取ってましたけど、一番は復帰後に気持ちよく仕事をしてもらえるように意識はしてましたね。
「この仕事やってないんかい」というふうにならないようには気を付けていました(笑)。

エース職員の不在を乗り切る対策

岩本アナ
具体的に、山本さんの育休期間をどのようにカバーされたのでしょうか?
曽田さん
山本さんはこの支店の営業のエースとして活躍していたので、そこの補充として、その時2年目だった職員を起用しました。本来だったら3年目に入る4月から初めて営業に携わるはずだったんですが、本部にもお願いして、1か月早めて3月から営業に出られるようにしてもらいました。
とはいえ、いきなり代わりに入っても同じことはできないので、まず年明けぐらいから山本さんと一緒に営業に行って、お客様との接し方とか、渉外営業のシステムなどを覚えてもらって、なんとか3月までのところで下準備をして、乗り越えました。
岩本アナ
仕事の引き継ぎ、お客様との顔合わせを前倒しで行ったんですね。
曽田さん
はい。若手職員にとっては初めての営業でしたけど、逆に経験を積めるプラスの期間として頑張ってくれました。
その経験があったので、2回目となる6月の育休は初回よりスムーズに対応できたと思います。
岩本アナ
本人もですが、チームとしても成長を感じられますよね。
曽田さん
そうですね。周りもみんな「1か月したら帰ってくる」という思いもあったので。1か月間なんとか乗り切って、全部みんなで片付けて、きれいな形にしてまた仕事復帰してもらおうという意識になってました。
岩本アナ
お客様の反応はどうでしたか?中央信用金庫さんでも育休があるんだね、みたいな驚きの声とかは?
曽田さん
最近はやっぱり育休を取るというのが珍しくなくなってきているのか、お客さんからも驚いたとかいう声は聞かなかったですね。
広瀬さん
窓口でも、「山本さんは今月お休みだよね?」「来週から復帰だよね?」みたいな感じで普通に言われました。
曽田さん
「いい時代になったね」みたいなことは言われましたね。

山本 健介さん

平田支店 主任

◯出生時育児休業(産後パパ育休)
2025年3月7日~3月31日(25日間)
◯育児休業
1回目:2025年6月1日~7月1日(31日間)
2回目は2026年取得予定

目次
  • 職場の実例を見て「次こそは」と決意
  • 妻直伝の「家事リスト」で奮闘
  • 育休で気づいた「名もなき家事」
  • 金庫愛の向上
  • 収入面での懸念を乗り越えて

職場の実例を見て「次こそは」と決意

岩本アナ
妃菜さん(妻)から事前にアンケートをいただいていたんですけど、すごくしっかりした方ですよね。
山本さん
あ、そうですか?(笑)。
岩本アナ
改めて育休を取得しようと思ったきっかけを教えていただけますか?
山本さん
はい。まず第一子が2020年に生まれたんですが、まだ庫内で男性が育休を取った事例がなく、やっぱり言い出しにくくて取れずにいました。
その後、2021年に初めて男性育休を取得した方が同じ支店にいて、実例が目の前にあり、取れる雰囲気を感じて、2人目の時は取ろうと思いました。
岩本アナ
なるほど。で、妃菜さんにも「育休取れるっぽいよ」みたいな話をしたということですか?
山本さん
そうですね。「同じ支店の人が育休取ったよ」と。
「次子どもができたら取ろうね」と話してました。
岩本アナ
そしたら妃菜さんは目を輝かせて?(笑)
山本さん
そうですね(笑)。
岩本アナ
それは妃菜さんも1人目の時はかなり苦労したっていうのがあるんですかね?
山本さん
そうですね。もちろん経験がないことですから。
子どもがちょっと泣くだけで「何が起こった?」みたいな、あたふたするような状況で1人にしてしまっていたので、かなり苦労していたと思います。
岩本アナ
子どもが泣いてる理由が分からなくて不安になることってありますよね。
コロナ禍での出産だったということなので、余計に大変なことも多かったんじゃないですか?
山本さん
そうでしたね。頼れる人も近くにいないし、出産も立ち会いができませんし、病室も1人10分くらいしか入れなくて、生まれた後も子どもには触れられないという環境でした。
岩本アナ
今回は産後パパ育休と通常の育児休業を組み合わせて、計3回に分けて取られるそうですね。
この「パパ・ママ育休プラス」という制度はご存じだったんですか?
山本さん
いえ、妻が知ってました。私は知らなかったです。
岩本アナ
曽田さんも「こんな取り方できるの?」みたいなことはなかったですか?
曽田さん
ありましたね。「そういったことができるの?」と。正直分からなかったので、色々調べてみたりしてとても勉強になりました(笑)。
岩本アナ
(笑)。だから次から育休を取る人がいたらある意味今回がモデルケースになって、男性の育休の幅も広がるということですね。
曽田さん
また、これが全店に向けての事例にもなりますし、恐らく私のように分かっていない人が多かったと思うので、先駆者として非常にありがたかったです。

妻直伝の「家事リスト」で奮闘

岩本アナ
実際に取ってみてどうでしたか?
山本さん
えっと・・・楽しかったです(笑)。
岩本アナ
(笑)。そうですよね、リアルタイムで成長を見られる感動ってありますよね。
山本さん
はい。日に日に、最初はずっと寝てた子が、今度は起き続けるみたいな、その変化の瞬間も見られましたし。
6月の2回目の取得時に至っては、初めての寝返りの瞬間を見ることができましたし、子どもの初めての瞬間ってこんなに感動的なんだなというのを実感しましたね。
岩本アナ
めちゃくちゃわかります。
家事分担に関しては、妃菜さんがやってほしい家事リストみたいなものを作られたんですよね?
山本さん
そうですね。7時には上の子を起こして、ご飯食べさせて、保育園に送って行く。帰ってきたら今度は洗濯機にあるものを畳んでいく。その間でオムツ替えとかもありますけど。で、21時までにはもう寝かしつけるというスケジュールです。
岩本アナ
改めて書き出されると、やることが結構あるなというふうに思いますよね。
山本さん
そうなんです。意外と一日終わるのが早いなって(笑)。 これを取らずにいると、上の子がバタバタする中で大変だなというのは身にしみて感じましたね。

育休で気づいた「名もなき家事」

岩本アナ
育休を取る前と後で、夫婦の関係も変わったりしましたか?
山本さん
うーん、それは変わらず、いつも通りじゃないですかね(笑)。
岩本アナ
より大事に思うようになったとか、感謝するようになったとかはないですか?
山本さん
それは感じますね。すごく感謝はしてます。
やっぱり1人目は育休取れなかったので。2人目で恩返し、というわけではないんですけど。
岩本アナ
妃菜さんのアンケートで、洗濯機の乾燥フィルターのゴミを取ってくれるようになったと書いてくれてます。
いわゆる「名もなき家事」に気付けるようになったのですね。
山本さん
そうですね。できるようになりました(笑)。
岩本アナ
他に育休を取って良かったなって思うこととかありますか?
山本さん
家族4人で過ごせる時間が増えたことですね。ちょっとした遠出とか、近場をドライブしたりとか。あと、夫婦2人ともよくドラマを見るんですけど、録り溜めた分とか、見たかった分を一緒に見る時間も作れて。 そういったところでも、何か楽しさを共有する機会にもなって良かったです。
岩本アナ
そうですよね。子どものことでバタバタして、さらに仕事をしながらだと、自分たちの時間ってほぼなくなりますよね。
もう取らない理由はないですよね。
山本さん
そうですね。後に続く方も、たくさん取ってほしいですね。
岩本アナ
育休が終わった後、子育てに対してどのように向き合っていきたいですか?
山本さん
引き続き「名もなき家事」をはじめ、できることは全てやろうかなと思ってます。

金庫愛の向上

岩本アナ
育休から復帰後、仕事が溜まってたとかもなかったそうですね。
山本さん
はい。ちょっとは残しておいてくれたらよかったのにと思うぐらい(笑)。
本当に仕事がなくてびっくりしました。いや非常に助かりましたね。
岩本アナ
育休を取る人が続いていかないと意味がないですが、山本さんの存在で、後に続く後輩たちもさらに取りやすくなりますね。
山本さん
そうですね。この支店で次に育休取得者が出れば、もちろん自分がその方の代わりをやりますし、違う支店だったとしても、「あとは自分たちに任せて」というふうに構えて送り出したいなと思っています。
岩本アナ
人事部長の淀谷さんからは「金庫愛」という言葉がありましたが、会社のために頑張ろうという気持ちが強くなっていますか?
山本さん
そうですね。それで言うと育休だけでなく普段から長期休暇取得を促進してもらえるし、実際に休みも取りやすいので、リフレッシュしてまた仕事頑張ろうといった気持ちになれますから、金庫愛は高まりますよね。

収入面の懸念を乗り越えて

岩本アナ
山本さんは新卒でこちらに就職されたんですか?
山本さん
いえ、22歳ぐらいの時に中途採用で入って、7年ぐらい経ちます。
岩本アナ
入庫のきっかけは何かあったんですか?
山本さん
こちらに転職する前は大阪で、すでに今の妻と一緒にいました。で、結婚・子育ての話になった際に、近くに家族もいないし、都会での子育てに不安も感じていたので、それならもう帰ろうということで就職先を探した感じです。
岩本アナ
子育てをしやすい場所ということで地元に帰って来られたんですね。
島根中央信用金庫さんを選ばれたのは何か理由があったんですか?
山本さん
正直に言うと業種問わず探しておりまして、まず自分の適性を調べるために色々なアンケートに答えて、一番上に出てきたのが当庫だったんです。
岩本アナ
転職サービスのマッチングアンケートですね。
山本さん
そうですね。一番マッチング度が高かったので。ご縁だと思って、受けて、内定をいただいて、という感じです。で、帰った次の年に結婚しました。
岩本アナ
改めて、故郷に帰ってきてどうですか?
山本さん
そうですね。子どもたちのおじいちゃんおばあちゃん、私たちの父母がたくさん遊びに来てくれますし、ちょっと子どもを預けて夫婦2人で外出とか、時間も確保できたりするので、やっぱり非常に良かったかなと。
岩本アナ
育休取得に関しては、それでも不安に思ったこととかはなかったですか?
仕事もそうですけど、経済面のこととか。
山本さん
もちろん、育休中は収入が0になるということで不安もありました。出生時育児休業給付金※が遅れてくることもわかっていましたし。
岩本アナ
そこですよね。出生時育児休業給付金も100%ではないですもんね。結果的には取ってみてどうでしたか?
山本さん
まぁ、貯金を切り崩すので、減っていくなあって言うのは感じましたけど(笑)。
でもその分かけがえのない時間を過ごすことができたので、プラスマイナスでいうとプラスだと思ってます。
岩本アナ
素晴らしいですね。「取って良かった」ということを社内で言っていくことが大事だと思います。
多分これから山本さんはそういった雰囲気づくりを任されていくと思いますので、ぜひがんばってほしいです!
山本さん
ありがとうございます。がんばります(笑)。

※ 育児休業中(最大180日)は賃金の67%が支給されますが、非課税措置と社会保険料免除を合わせると、休業前の手取り額に対して実質80%が保障されます。
ただし、支給は初回の休業から約2〜3か月後となるため、事前の資金計画が大切です。


山本妃菜さん

山本さんの妻・妃菜さんに聞く
「パパの育休に対するホンネ」

今回の取材にあたり、山本さんの妻・妃菜さんにもアンケートにご協力いただきました。一番近くで見てきたママからの「男性育休」のリアルな声を紹介します。

Q.
育休取得を考え始めたきっかけは?
A.
上の子を出産した際、コロナ禍で立ち会いも面会もできず、世の中的にも父親が育休を取るような空気ではありませんでした。しかし、ここ数年で父親でも育休を取得してもいいような空気に変わってきたため、下の子の出産では貴重な新生児の時期などを夫婦で一緒に育児していきたいと思い、私の方から夫に相談しました。また、夫から職場の上司に育休について相談した際に、好意的な反応をしてくれたと聞いて、安心して取得することができました。
Q.
取得前に心配だったことはありますか?
A.
正直、夫が『取るだけ育休』になったらどうしようという不安がありました(笑)。 また、下の子が3月生まれなので、2〜3月に上の子と同じこども園に入園できるのか、私の職場復帰後のスケジュールも不安でした。さらに、収入の面で夫婦2人で育休を取ると無給の期間が発生するため、その点も心配でした。
Q.
その不安はどのように解消されましたか?
A.
事前に育休中にしてほしい家事の一覧を書き出したところ、全ての家事をしてもらえました。
復帰後の園の問題については、「パパ・ママ育休プラス」という制度のおかげで、私の職場復帰後に交代で夫が再度育休を取得できることになり、4月入園を目指せることになりました。慣らし保育なども夫に対応してもらおうと思います。収入面も、分割して育休を取得できたことで不安が少し減りました。
Q.
実際に取得してもらって良かったことは?
A.
夫が家事全般(掃除、洗濯、料理、上の子の送り迎えなど)をしてくれたので、私は下の子のお世話に専念することができ、身体的にも精神的にも本当に助かりました。夫が育休を取得してくれたおかげで、家族の時間をたくさん作ることができて良かったです。
Q.
育休取得後、夫の変化で驚いたことはありますか?
A.
前より家事をしてくれるようになりました。
以前は洗濯物を畳むけどしまってくれないだとか、洗濯機の乾燥フィルターのゴミを取ってくれない等のいわゆる「名もなき家事」に気づいてくれていないところがありましたが、今はしてくれるようになり、お願いするとすぐに動いてくれるようになりました。
Q.
これから育休を取得する家庭へのアドバイスはありますか?
A.
事前にしてほしいことを書き出して共有しておくことが大事だと思います。
「言わなくてもやってくれるだろう」と思っていると、やってくれなかった時にストレスが溜まるので何をしてほしいのか話しておくといいと思います。
また、小さい子がいると食材の買い出しや献立を考えることが大変なので、食材宅配サービスを利用するのもおすすめです。

取材日:2025年9月9日

岩本アナウンサーの取材後記

島根中央信用金庫さんの「育休」は、単なる制度の枠を超え、未来を見据えた「強い組織づくり」そのものであると感じました。

その根底にあるのは、「人に対する施策は10年先を見る」という理念です。この言葉を道しるべに、男性育休の推進を具体的なアクションへと繋げたのが人事部長の淀谷さんでした。彼女の情熱が起点となり、やがて理事長の口から「育休を取らないのが恥ずかしい時代が来る」という力強いメッセージが発信され、企業の風土を根底から塗り替えていったのだと思います。

その想いは現場にも深く浸透しており、「誰が抜けても大丈夫なように」マルチスキル化を進め、お互い様の精神で支え合う、家族のような温かさと信頼がありました。

山本さんが語ってくれた「子どもの初めての瞬間に立ち会えた感動」や、妻の妃菜さんが教えてくれた「家族の時間をたくさん作ることができて良かった」というエピソードは、育休がもたらす本当の豊かさを私たちに教えてくれます。

男性育休をきっかけに、働く人が大切にされ、その家族までが笑顔になる。そんな島根中央信用金庫さんの挑戦は、これからの時代の「新しい当たり前」を照らす大きな光になることでしょう。