応援企業005
松江土建株式会社

お互いの「思いやり」で育休推進。変わりゆく建設業界を地方からリードする。

後藤優太さん

建築部工事課副主任
取得期間
88日間(2024年4月3日から6月30日)

能海 駿さん

建築部工事課副主任
取得期間
31日間(2024年7月1日から7月31日)

目次
  • 不思議、大変、愛しい。
  • 育休の決め手は妻の言葉。
  • 芽生える、パパ目線。
  • 育休のバトンをつなぐ。
  • 男性の育休推進に何が必要?
  • 育休推進のために、経験者だからできること。

不思議、大変、愛しい。

岩本アナ
今回それぞれ育休を取ってみてどうでしたか?
後藤さん
思ったより早く終わりました。日中はあまりやることはなかったんですけど、夜は子どもが夜泣きして妻が母乳をあげた後、寝かしつける係だったので、それがメインですね。
岩本アナ
日中やることがなかったというのは、奥さんがやっていたということですか?もしかして寝てないですよね?(笑)。
後藤さん
寝てないです(笑)。
日中は、おむつを替えたりお風呂入れたり、一通りはしてました。
岩本アナ
ああ、よかったです(笑)。
育休をとっても妻に任せて夫は寝ているっていうパターンもありますから(笑)。
奥様から「指示待つな」とか言われなかったですか?何のために育休を取ってるんだ!とか。
後藤さん
ないですないです(笑)。
岩本アナ
よかったです(笑)。
では3か月は子どものそばにいて、おむつを替えたり、お風呂に入れたり、寝かしつけたりっていう感じですね。奥様はどんな反応でしたか?後藤さんが育休を取ったことに関して。
後藤さん
育休を取ったことに関しては、すごく助かったと言っていましたね。
岩本アナ
育休を取って良かったことはありますか?
後藤さん
やっぱり子どもの成長を近くで見れるので、それが一番良かったですね。
岩本アナ
能海さんはいかがでしたか?
能海さん
自分は産まれてから1か月後ぐらいに育休を取得したんですけど、育休に入る前、産後1か月の間に仕事で遠方に行っていて、夜や日中に電話やLINEで夜泣きがすごくて寝れないというのを聞いていました。自分が育休に入ってからやっていたことは、ミルク、おむつ、お風呂。最初の1〜2か月は夜中の3時とか4時くらいまでずっと泣いていたので、抱っこを担当してその間に妻に寝てもらうというのが基本的な流れでしたね。
岩本アナ
育休に入る前の1か月の間に奥様から大変さを聞いて分かってはいたと思うんですけど、いざ育休を取って自分がその環境に身を置いてみるとどうでしたか?
能海さん
子どもが一子目というのもあって、自分も妻もどういう対応をしてあげたらいいのかわからないっていうのが不安なところで。夜泣きしてる時も、抱っこするのはいいけど、どういう抱き方をすればいいのかとかが全く分からないんで、最初の1〜2か月ぐらいは本当に二人とも顔色があんまり良くなかったですね(笑)。
岩本アナ
(笑)。
改めて育児って大変だなと思いますよね。赤ちゃんが喋ってくれればいいんですけどね。
「喉乾いた」とか「おむつ替えて」とか。なんで泣いているか分からない場合もありますしね。
能海さん
だんだん、育休期間の後半ぐらいになると、泣き方で何となく分かってきて、そろそろお腹減ってきたからかなとか。取得して良かったのは、子どもの成長を直接感じて、自分も親になったんだなっていうのが実感できたところですね。
岩本アナ
親である実感が育休を通して芽生えたと。父親って赤ちゃんが10か月お腹にいたわけでもないし、予定日ぐらいでいきなり「初めまして」って対面する感じだから、なかなかね。

育休の決め手は妻の言葉。

岩本アナ
お二人がそれぞれ育休を取ろうと思ったきっかけは何ですか?
後藤さん
妻に言われたのがきっかけだったと思います。「取ってほしい」と言われてから調べたと思います。会社に相談してみたら取れるということだったので、取りました。
岩本アナ
奥様から「育休を取ってほしい」と言われた時、率直にどう受け止めました。
後藤さん
やっぱり取った方がいいんだなと思いました。
岩本アナ
奥様がそう言ってくれたから、一歩踏み出すきっかけになったということですよね。
能海さんは、育休を取ろうと思ったきっかけは何ですか?
能海さん
妻から、子どもの成長を間近で一緒に感じてほしいという声もありましたし、社内的に長期で育休を取得した男性があまりいなかったと思うんですよ。でも、例え数日間だったとしても妻と一緒に子どもを身近に感じたいなっていうのはあったので、取得しようと思いました。
岩本アナ
なんか、いいですね。「一緒に成長を感じてもらいたい」というのは。お二人とも上司の月森さんに伝えた時はどんな反応でしたか?
能海さん
最初連絡した時は少しびっくりされたような反応だったように思いますが、否定的な答えをもらうわけでもなく、すんなり受け入れていただけました。その先のこと、現場の動きなどを自分なりに考えてから連絡したこともあったので、受け入れていただけたのかなとは思います。
岩本アナ
この時期だったら育休を取れるんじゃないかというまとまった期間を自分で考えてらっしゃったんですか?
能海さん
ちょうど現場が6月末頃までかかるということだったんで、出産予定時期より1か月ぐらい後ではありましたけど、そこだったら一段落してるかなと思っていたので。それ以外の現場に行っていたとしても、だいたい長期の現場が終わったりすると、1週間とか有休使って休んだりするので。まずは育休で長期休みを取ろうというよりも、1週間でも有休を使って少し休もうと考えていました。
岩本アナ
でも育休という制度があるなら取ろうかなということで、早い段階から相談されたってことですね。
後藤さんはどうですか?
後藤さん
僕は確か子どもが産まれる半年前ぐらいに月森さんに連絡して。面談シートというのを月に一回書くんですけど、そこに書いて提出したら「育休制度があるから大丈夫だよ」と返ってきて。
岩本アナ
取れるのが分かってほっとしましたよね。そして早めの相談で、後藤さんもこの時期なら自分が取れるんじゃないかと、逆に提案したりされたんですか?
後藤さん
そうですね。工事が終わる2か月前ぐらいで、ほとんど終わりかけの方で、そのあたりなら大丈夫かなと思って。その時は現場所長に聞いたんですけど、大丈夫だと言っていただいたので。
岩本アナ
タイミングも良かったんですね。

芽生える、パパ目線。

岩本アナ
育休を経験したからこそ身についたこととかありますか?
後藤さん
身についたというか、市役所などの建設をしている時に「ここは子どもに優しい造りだな」とか思います。
能海さん
ああ、僕もそういうのがあるかもしれないです。1〜2か月の月日が経って子どもを連れてちょっと遠出したりすると、ショッピングモールとかの授乳室とか、男の人でも入れる場所と入れない場所があって。男性も入れる施設が整っているところは、やっぱりいいなと思いますね。
岩本アナ
そこは僕も感じたんですが、今まで目につかなかったことが目につきますよね。男性のトイレとかにも子どもを座らせられる広い個室があって、子どもといない時はそこを使わないようにしようとか、そういうことを考えましたね。
能海さん
そのあたりは結構考え方とか目線が変わったかなと思います。
岩本アナ
育休を取ったことで、後藤さんは何か仕事に活かせそうだなと感じることはありましたか?
後藤さん
・・・今のところまだ活かせてないですけど、シンプルに子どものために仕事を頑張ろうと思いますね。
岩本アナ
やっぱり原動力は子どもになりますよね。帰ってすやすや寝てる姿とか、笑顔を見ると、この子のために頑張ろうって思えるし頑張れますよね。

育休のバトンをつなぐ。

岩本アナ
夫婦のコミュニケーションが増えたとか、育児の大変さが分かったってこともそうだと思うんですけど、他にも育休を取ってよかったなと思うことはありますか?
能海さん
よかったことというか、あまり長い期間ではなかったですけど、会社に対して育休を取らせてくれたことへの感謝の思いがまずありますね。
岩本アナ
会社として送り出してくれた、同じ部署のメンバーもサポートしてくれたということですね。「復帰したら頑張るぞ!」と思いますよね。
能海さん
妻からは「もう少し長い期間取れたら取ってほしいけどね」とは言われましたけど(笑)。でもだいぶ助かったとも言ってもらいました。たしか1歳になるまではもう一回育休が取れると思うんで、その期間でまたタイミングが合えば、ですね。
岩本アナ
そこは自分の仕事のステージもあると思うし、取りたいと言えば「いいよ」と受け入れてくれる分、できるだけ迷惑をかけないように自分も頑張らないとって思いますよね。育休を二人とも一回取っているので、今後同じ部署の人が育休を取りたいと言っても快く送り出せますよね。
能海さん
そうですね。それこそ他の社員が取得すれば、サポートする必要があると思います。自分がこうやって取得しようと思った理由のもう一つが、他の男性職員も取りやすい環境を作るために、という部分もあったので、今後他の職員の育休取得に繋げていけたらなと思います。
岩本アナ
ご自身のご両親の反応とかどうですか?特にお父さん。僕は「育休取るのか?」とすごく驚かれました。
能海さん
うちも驚かれましたね。自分の親世代は「お金を稼いでくるのが男の役割」という時代なので。でも今の時代はそういうわけにもいかないので、自分的には良かったと思っています。
岩本アナ
後藤さんはどうしたか?
後藤さん
驚いていました。父も建設関係の仕事で、子どもの頃全然家にいなかったんで。
「育休が取れるのか」と驚いていました。
岩本アナ
業種関係なく、取りたい人が育休を取れる世の中になっていくように頑張っていきたいですね。
お二人はもう男性育休を普及させていく側の人間ですから(笑)

男性の育休推進に何が必要?

岩本アナ
育休の前後で、何か心境の変化はありましたか?
能海さん
なるべく残業をしないようにっていう考えがすごく強くなりましたね。なるべく無駄を省いてというか。
岩本アナ
1秒でも早く家に帰って、子どもとの時間を作るという。
能海さん
そうですね。
岩本アナ
確かに育休っていうのはメリハリにもなりますよね。まとまった期間で子育てに携わることで、しっかりと仕事とのメリハリもついて、仕事を早く終わらせて、子どもといようって。自分と家族との時間を見つめなおす時間にもなりますよね。後藤さんはどうですか?
後藤さん
自分も以前は残業を結構していたんですけど、育休からの復帰後はできるだけせずに休んで、家族との時間を増やしました。
岩本アナ
今後男性育休取得を増やすために必要なことは何だと思いますか?
能海さん
やっぱりお金のことが不安な人も多いと思うので、もう少し補助が大きくなれば、より育休を安心して取得できるのかなと思います。
岩本アナ
後藤さんはどうすれば増えると思いますか。
後藤さん
育休を取る時、他の人に迷惑をかけてしまうと思うのが取りにくい理由の一つでもあると思います。だから取得者と同じ部署のサポート業務が増えた人たちへの手当を会社から出してもらうなどあれば、もう少し休みやすくなるのかなと。
岩本アナ
確かにそれがあると快く送り出せますよね。お金は大事ですから(笑)。
松江土建さんなら、これからも家族との時間と両立して働いていけると感じました。
能海さん
今も残業を少なくとか、週休2日制に移行していて、より休日の家族サービスに費やせる時間を増やしていける状況ではあるので、本当に仕事とプライベートが両立しやすい職場環境だと思います。

育休推進のために、経験者だからできること。

岩本アナ
お二人は子どもが生まれた時期が割と近いですが、そういった相談や育休トークなどはしていたんですか?
能海さん
部署は同じですけど、現場に出たらみんなバラバラになるので、後藤さんは安来市で、自分は育休取得時は大田市にいて。会う機会も少ないんです。社内の回覧で子どもが産まれましたと情報が入りますけど。自分が部長に報告した時に、「今、後藤さんも育休を取ってるよ」というふうに聞いて初めて知りました。
岩本アナ
最初、相談するのにためらいや迷いや悩みってありましたか?
能海さん
自分としては今の部長、部長補佐は話しやすい人だと思っていますし、仮に少し話しにくい上司であったとしても、自分の思いを伝えないと動かないですし。思ったことはなるべく言うようにしています。ただ、本当に話しやすい環境だと思います。
岩本アナ
会社としても男性育休というのを推進していきたいという雰囲気があるようなので、ちょっと相談してみようと思ったんですか?
能海さん
そうですね、出産祝い金が上がったとか、育休も2回に分けて取れるとか、社内的に色々改正があって、回覧が回ってきてからより詳しく情報を知りましたね。
岩本アナ
現時点で新たに2名の育休取得希望があると聞いているのですが、もしその2名が育休を取るとなったらいかがですか?同じ部署の後輩が1か月、2か月、3か月抜けるわけですけど。
能海さん
もちろん取得を勧めます。仕事のことは、そういう立場になった時にサポートしますし。
岩本アナ
安心して取ってこいと。子育てに専念しておいでと。そういった環境を多分作っていくことが大事だと思うんです。これから会社の「育休推進応援団」として頑張ってください!
能海さん
後藤さん
がんばります!(笑)

岩成 佳明さん[建築部部長]

後藤さん、能海さんの所属部・部長

月森 勝さん[建築部部長補佐]

後藤さん、能海さんの所属部・部長補佐

目次
  • 時代で変わる「男の育児」。
  • 「早めの相談」がとにかく大事。
  • 休む人も、会社も、タイミングを思いやる。
  • 育休推進企業、もう一つのメリット。
  • 家庭の円満、仕事の成功。

時代で変わる「男の育児」。

岩本アナ
松江土建さんは男性の育休取得者が多く、社員約200人中10人目だということで。これまでインタビューをさせていただいた中で最多で、かなり育休が進んでいるように思います。育休を推奨しようといった雰囲気があるんですか?
月森さん
そうですね。育休を推進していこうという会議があって、その議事録が全社員に共有されていて。それを見た若い社員が育休取得ができることを知り、増えているのかなと思います。
岩本アナ
会社の育休を推奨するという方針を受けて、お二人は率直にどう思われましたか?
岩成さん
正直なところ、自分たちは子どもが生まれた時、普段どおりに仕事をしていたので「育休を取って何をするんだろう?」という疑問はありました。でも自分自身確かに、幼少期の父親との記憶が無いなと思い、こうして若いうちから子どもに接するのはいいのかもしれないなと。
工事現場って、現場監督として配属するとなかなか抜けにくいですし、人員が潤沢なわけでもないし工事量も多いので、休まれるのは苦しいのかなと最初は思ったんです。でも育休を取る彼らも、現場が終わるタイミングや、迷惑をかけない時期を考えて言ってきてくれて。「次自分が配属される現場がありますか?」とか、その声掛けがとにかく早かったから準備ができました。現場の心配を自分たちでしてくれていたので、こっちも「君たちがいなくても大丈夫なようにするから」と 。
月森さん
それが一番大きかったですね。
岩本アナ
本人たちもしっかりと準備を進めてくれていたと。
確かにお二方のお子さんが生まれた時代だったり、建築業界というのは「いっぱいいっぱいで回している業界」のイメージもあります。
岩成さん
自分に子どもが生まれた時は、18時ぐらいに帰宅して、子どもをお風呂に入れて、現場にまた戻ってました(笑)。それだけはやっていました。
岩本アナ
なぜお風呂だけ手伝いに家に帰っていたのですか?
岩成さん
妻に、一人でやってみてと言われて。一人でできないんですよ、確かに。子どもを風呂に入れて、自分の体も拭かないといけない。そこらへんに子どもを投げとくわけにもいかないし(笑)。なるほどなぁって、その時体感しました。
岩本アナ
経験してみないと分からないというか、妻の負担もかなりあったんだろうなと気付きますよね。そういう意味では、今回後藤さんと能海さんが育休を取られて、おそらく色々なことを奥様としてきたと思いますね。
岩成さん
彼らのこの経験が、次に自分が上司になった時に、また活きてくる・・・だよね(笑)?
後藤さん
能海さん
(笑)(うなずく)
岩成さん
部下が育休を取りたいと言った時に「NO」とは言えないですね(笑)。

「早めの相談」がとにかく大事。

岩本アナ
現場は工期などもあり、タイミングとにらめっこだとは思います。実際に育休の相談が来た時は、どんなふうに声をかけたんですか?
月森さん
時期を聞くと、現場の工程上忙しい時期が終わるところと、後藤さんが休みたい時期とがちょうど合ったんです。そこからまず、奥様と育休期間の話し合いをしてもらって、次に現場の所長と話をして決定しました。 1回目の育休3か月が終わって、今年いっぱい復職して、また2か月育休を取るんですけど、その間をどうするかというのは部長と本人と話をして決めていきました。
岩本アナ
やっぱりそこも、早めの相談をすることが大事なんだなと思いますね。
月森さん
あれは、出産予定日が分かって少し経ったぐらいだったかな?
後藤さん
生まれる半年前ぐらいですかね。
岩本アナ
育休を推進していくという会社の方針を受けて、会社が変わろうとしているのは感じましたか?
人員の融通や、育休期間の業務を分担する側への手当などはありましたか?
岩成さん
現在はサポートする人員に対して手当を支給してはいません。今どんどん若い社員に子どもが生まれていて、これから重なってくるとどうなるのかなという心配はあります。そうなるとサポートする人員への待遇を考えないといけないのかなと思いますね。
岩本アナ
残った人で作業を少しずつ分担しながら、そのあたりもうまく引き継ぎはされていたということですよね。
人員の問題はどこの企業もインタビューする中で難しいなと話していました。

休む人も、会社も、タイミングを思いやる。

岩本アナ
お二人が育休を取ると決まった時、会社の雰囲気的にはどうでしたか?
岩成さん
いよいよ育休を取るお父さんが出てきたんだな、という感じです。我々は、さきほども言ったように「育休って何をするんだろう?」という感覚が強かったので。だけど、会社の中で誰一人反対することはなかったです。「そういう時代になったんだな」と盛り上がった感じですね。
岩本アナ
建築部・工事課では初の男性育休ですか?
総務
仲佐さん
有休を使った人はおられたかもしれないですが、申請して「育休」を取られたのはおそらく建築部では後藤さんが初めてです。
月森さん
能海さんは現場が終わったタイミングで育休を取っていて、生まれてからしばらくは「自分の役割は育休に入るまでに全部終わらせる!」という強い気持ちでやってくれて、予定どおり完成引き渡しすることができました。そして生まれて1か月ぐらいしてから育休に入りました。
岩本アナ
聞いていると結構トントン拍子だったように感じますが、育休の取得を進める上で苦労されたことはありますか?
月森さん
今回に関しては特にありませんでした。担当する現場も、ちょうどタイミングが良かったこともありますので。なかなかぴったり現場とタイミングが合うのは難しく、その場合は調整がその都度必要になってきていたと思います。
岩本アナ
この時期に取りたいと、早い段階で言ってもらえれば、会社側としても現場の采配ができますよね。何よりも本当に早めの相談とコミュニケーションが大事ですね。
月森さん
急に「来月休みます」とか言われると難しいのですが、取りたい時期をできるだけ早めに言ってもらえると、調整する期間ができますからね。
岩本アナ
工事も前もって決まっているところがあるでしょうし、予定や計画は早めに言ってくれた方がいいですよね。先ほどおっしゃっていたように、とりあえずは「まず相談して」ということですね。
岩成さん
ありがたいことに、来年・再来年の工事の見通しが立っており、そこへ配置する人員の計画をしているので、早めに言ってきてもらえるのが一番助かりますね。

育休推進企業、もう一つのメリット。

岩本アナ
男性育休の推進を進めていくと、求人や若い人材の定着という意味でもメリットがあると思いますか?
岩成さん
あると思います。今、そういう時代になってますよね。奥様が育休を気にするケースもある気がするんです。夫の会社に育休制度があると安心だろうし、そこを踏まえて入社してくることもあると思います。能海さんは、奥様から言われたの?自分でもあらかじめ知っていた?
能海さん
育休の存在は知っていました。可能であれば取ってほしいと、妻からも言われました。
岩本アナ
結婚相手に求めるものが女性も変わってきているんでしょうね。岩成さんや月森さんの時代は「男は一家の大黒柱」といった風潮で、今はやっぱり家庭も大事にしてくれる人を女性は見ていると思うし、そういう職場で働いている人は安心というか。
月森さん
今の若い人達は、会社を選ぶ上で「休みはどれくらいあるのか」というのが給料よりも気になっているという話も聞くので、週休2日や、男性育休取得などを明記できれば、会社を選ぶ上でのアドバンテージになると思います。
岩成さん
インターンシップでも、福利厚生のことをよく聞いてきますからね。
岩本アナ
へぇー!就活生の段階ではまだ育休や結婚をイメージできていない人が多いと思うんですが、建築業界だからなおさら気になるんですかね?イメージ的には体力的にきついとか大変なイメージがあるので。そういった会社が「男性育休も取れるし、休みもあるんです」と言ってくれると、入社を考えている若者達は安心するんじゃないですかね。
岩成さん
そうですね。うちの子どもが今20歳と18歳なので、ちょうどそういう時期で、長女は今年から働いています。
月森さん
うちは23歳と下が13歳ですね。長男は今年就職しました。
岩本アナ
自分の子どもが働く会社はどうかなとか考えたりしますか?
岩成さん
娘の結婚相手がそういう会社で働いていたら確かにいいなと思いますね(笑)。
岩本アナ
男性育休を推進してくれる会社というのは、将来結婚を考えている女性からしても安心だし、親目線でも安心するということですね。
岩成さん
育休制度がある会社はある程度余裕があって、社員を大切にする思いのある会社だと親目線で感じます。そこは確かにメリットというか、会社を選ぶ上でのアドバンテージになると思います。

家庭の円満、仕事の成功。

岩本アナ
仕事とプライベート、子育ての両立というのは、この時代どうなっていくべきだと思いますか?
岩成さん
自分の親はずっと仕事をしていて、小さいころ遊んでもらったとか、あまり覚えてないんです。なので自分はなるべく、休みの日は子どもと一緒に遊ぼう!という感じでした。それを、育休を取ってしっかりできると、子どもにとってすごくいいことなんじゃないかなと思います。プライベートが充実すれば家庭の心配もなく、仕事に向かえるのではないかと思っていますので。育休後の成長にも期待をしていきたいなと思います。
岩本アナ
月森さんはいかがですか?
月森さん
仕事と子育ては両立するべきだと思います。家庭が円満にいってこそ仕事がうまくいくと思うので。家庭を投げ出してでも仕事が優先っていう時代でもないし、家のこと半分、仕事のこと半分でできるのが理想かなと思います。
岩本アナ
子どもは20歳ぐらいで家を出ますが、奥様とはその先もずっと一緒だと考えると、手を取り合って一緒に乗り越えたなと言える時間は、絶対にかけがえのないものになりますよね。だからこそ、会社も整備をしていかないといけない。 あと、育休取得者の業務を分担してサポートしてくれた方がもし次に育休を取るとなったら、育休から帰ってきた人も頑張って支えようと思えるだろうし。
岩成さん
お互い様でこれからやっていくことになるだろうと思います。
月森さん
すでに今、別の職員から次の育休の相談があります。いつから自分が育休を取って、その間の仕事をどうするか。後藤さんと能海さんも先輩や上司に相談して、自分で育休の計画を立てていたので、まずは自分で計画してみて、と伝えています。
岩本アナ
ではその方が数か月後には育休を取って、復帰した後藤さん能海さんが次は頑張らないと、というお互い様の精神で、組織を強く回していく感じですね。

仲佐喜美子さん[総務部]

社内制度が育休取得を後押し!

出産祝い金でエールを。

岩本アナ
出産祝い金制度について教えていただきたいのですが。改訂があってだいぶ金額が上がったとか。
総務
仲佐さん
令和5年6月から改定になりました。育休期間に給料が出ないなら有給で終わらせようという考えもあったと思うんです。育児休業給付金とかはありますけど、給料分丸々出るわけじゃないですよね。
岩本アナ
はじめの半年の間が給料の67%で、半年後から50%とかですよね。(※取材当時)
 ※2025年4月より、一定の条件を満たせば、子の出生直後最大28日間は給付率が80%に引き上げられます。
総務
仲佐さん
その不足分が、育休を取る側にとって不安要素なんじゃないかという話があがり、どのくらい休んだらどのくらい収入が減るのかとか、そんな数字の計算をして経営者の会議で話し合ったことがありました。その時に「このぐらいのお祝い金があれば不安がなくなるんじゃないか」と。
岩本アナ
それは素晴らしい考えですね。
総務
仲佐さん
話が出てから決定するまで、ひと月ぐらいで、とてもスピーディーでした。しかも10倍。2万円から20万になり、とても画期的だったなと担当者として思いました。
岩本アナ
やっぱり社内でもそういう子育て世代を大切にしていこうと。
総務
仲佐さん
最初は育休を取得するのは内勤の方が多くて、現業部の方は難しかったんです。内勤の方も「自分は内勤だから取れるけど、ちょっと現場の人には申し訳ない」と言っておられました。その方が松江市の取材を受け、その様子を社内に紹介した時に、土木部や現業部からも申請や相談が出てきたと聞きました。長めの育休申請もあったりと、皆さん意識が変わってきたのかなと。
岩本アナ
部署によって取りやすい、取りにくいなどの部署間格差もなくしていかないといけないですしね。 

取材日:2024年9月25日

岩本アナウンサーの取材後記

松江土建の後藤さん、能海さんに育休の感想を聞くと、「子どもの成長を近くで見られてよかった」と笑顔がこぼれる一方、「育児は大変だった」と苦笑いも。
育休はまさに、楽しさも大変さも丸ごと経験できる貴重な時間なんですよね。
そして、育休を経たお二人は仕事復帰後、建築現場で「ここは子どもに優しい造りだな」「男性の育児に優しい施設のありがたみが分かる」と、自然と“パパ目線”が宿っていました。
この視点が増えることで、会社の強みにもなり、誰にでも優しい社会へとつながっていくのだと思います。

また、男性育休の取得は会社との調整が必須ですが、松江土建の「時代に合わせて業界のイメージを変えていく」姿勢はとても印象的でした。
特に画期的だと感じたのが、子どもが生まれたら20万円を支給する「出産祝い金制度(第一・二子は20万円、第三子は30万円、第四子以降は50万円支給)」。育休中の収入減の不安を軽減するために作られた制度ですが、こういった取組が「子育て世代に優しい会社」という意識を生み、育休の相談がしやすい環境につながっているんでしょうね。
今の就活生は「休暇制度」について熱心に質問することも多いそうで、未来が描きやすい制度がある会社はそれだけで大きなアドバンテージになり、結果的に、優秀な人材の確保にもつながっているのだと強く感じました。