応援企業004
石見ケーブルビジョン株式会社

子育て支援で「チャンス」を生み出す。育休から始める地方創生の第一歩。

出川 優介さん

制作編成部 制作課・主任
取得期間
2週間(2023年6月15日~29日まで)

目次
  • 育休取得のきっかけ
  • 夫も妻もスタートは一緒
  • 子育てを楽しみたいからこそ
  • 育休取得への不安
  • 2週間でも分かること
  • 父親目線の誕生
  • 育休を取りやすい環境
  • 安心して任せられると思ってもらいたい
  • 赤ちゃんありきの生活

育休取得のきっかけ

岩本アナ
石見ケーブルビジョンさんで初の男性育休取得だそうですね。取得しようと思ったきっかけは何だったんですか?
出川さん
元々、東京で役者の仕事をしていたんですが、これからの生活や妻のことを考えた時に、妻の地元に帰るという決断をしました。子どもが欲しいというのもその一つでした。
でも、子どもが欲しいと自分も思っているのに、全部妻に任せっきりになるのはどうなんだろうと思って、取れるなら自分も積極的に育休を取りたいと思いました。
岩本アナ
なるほど。早めに会社に相談をされたとお聞きしました。
出川さん
妊娠が分かってから妻の体調が悪かったので、もうその段階で早めに相談させていただきました。
岩本アナ
奥様も同じ職場だから、そのあたりの調整や、育休取得は社内でスムーズでしたか?
出川さん
そうですね。今は統合されたのですが当時は妻とは課が違って。妻は妻の上司と密にやり取りをさせていただいて、僕も上司との密なコミュニケーションを意識していました。むしろ職場の方から「育休どうする?」と気にかけていただいたので「どうするのがいいでしょうか?」と相談させていただいた事もありました。
岩本アナ
会社からむしろ積極的に「育休を取ってもいいよ」と呼びかけがあったのですね。
出川さん
そうですね。僕が初めての男性育休だったので、2週間という短い期間ですが育休を取らせていただきました。

夫も妻もスタートは一緒

出川さん
育休は6月15日から29日、妻が帝王切開で出産をして、退院してからの2週間で取得しました。
岩本アナ
一人目の時ってバタバタしますよね。
出川さん
そうですね。何をしていいか分からないので、とりあえずwebで「生まれてすぐにやること」「妻の負担を軽減するために」で検索しました(笑)。
岩本アナ
みんなが調べるやつですよね(笑)。
2週間の育休期間では、具体的にどんなことをしましたか?
出川さん
妻がなるべく休めるように身の回りの家事をしたり、おむつを替えたり、ミルクをあげたり、基本的なことをしていました。難しいことはできないので、なるべく妻が休む時間ができるようにと考えて動いていました。
岩本アナ
なるほど。2週間で少し慣れましたか?
出川さん
いえいえ、慣れないです。2週間じゃちょっと短かったかなと思いました。
岩本アナ
初めておむつを替えたり、ミルクをあげてみてどうでしたか?
出川さん
どうやったらいいのか本当に分からなくて。動画などで調べたりしたんですが「本当に合っているのか」と不安で。飲んだ後にゲップを出すのも、どうやったらいいか試行錯誤でした。妻がやっても出ない、僕がやっても出ない、どうしたらいいんだ!っていうお手上げ状態でした。
岩本アナ
奥様も初めてですしね、二人で試行錯誤しながら困った事はありましたか?
出川さん
妻は結構調べるタイプで、僕は行き当たりばったりで。知識量が違っていて、妻が求めるところまで僕がなかなか行けないもどかしさがありました。
岩本アナ
妻も夫も、スタートラインは一緒のはずなのに、何だか妻に頼ってしまうところもありますよね。いざ育休を取って自分もやってみると、こんなに大変なことを調べてやってくれていたんだと気付きますよね。
出川さん
本当に頭が上がらないです。
岩本アナ
現在はお子様も1歳3か月とのことで。どうですか、今の暮らしは。
出川さん
ちょっとずつ喋るようになってきて意思表示ができるようになってきたので、とにかくかわいいですね。グズったりして大変なところもありますけど、それでも早く帰って子どもとの時間を作りたいなと毎日思います。

子育てを楽しみたいからこそ

岩本アナ
奥様はお仕事されていますか?
出川さん
そうですね。早く出て、8時間働いて、みんなより早く上がるというフレキシブルタイムで。
岩本アナ
保育園のお迎えの時間に合わせて調整しているような形ですか。
出川さん
基本的に妻が仕事を早く上がって、子どもの送り迎えをしてくれているんですけど、そればかりだとやっぱり負担になってしまうので、自分もなるべく早く帰って妻に楽をさせてあげたいっていう気持ちです。業務上なかなか難しい面もありますが。
岩本アナ
仕事と育児の両立、なかなか難しいですよね。今まで仕事100%でやっていたのに、育児もあると時間が足りなくなりますよね。そこをやっぱり夫婦で分担していこうと感じているんですね。
出川さん
結局子どものこととなると、やっぱり妻の方が詳しいというか、どうしても子どもも妻に頼る、甘えることが多いので、その分自分にできることってなんだろう?と考えた時に、僕は家事や身の回りのことを担当しよう、となりました。
岩本アナ
その「分担」を意識するようになったのは、育休を取ったことがきっかけでもあるんですか?
出川さん
それもそうですし、やっぱり子どもが生まれてからの女性の負担ってかなり大きいじゃないですか。 だから少しでも…何回も言いますけれど、少しでも負担を軽減してあげなきゃっていう思いがあります。僕のエゴかもしれないし、余計なお世話かもしれないですけれども(笑)。してあげたいし、休んでもらいたいし。妻にも休んでもらうことで、育児を楽しめたらいいなって思いますし。
岩本アナ
そうですね。「義務」じゃなくて「楽しんで」子育てしたいですよね。

育休取得への不安

岩本アナ
2週間育休取得する時、仕事における心配事はありましたか?
出川さん
取得した時、僕はまだ入社2年目で大きな仕事を任されていなかったこともあって、仕事面における心配事はなかったです。日々の取材や編集などは頼れる先輩方がたくさんいたので、そこはお願いして。
岩本アナ
頼れる人や上司が周りにいっぱいいたんですね。取得が決まってからは、業務の段取りや引き継ぎをしましたか?
出川さん
当時僕は一番下だったので、先輩に「お願いします」と伝える簡単な引き継ぎだけでした。
岩本アナ
先輩方の反応はどうでしたか?業務が少し増えることになると思うのですが。
出川さん
好意的に受け止めてくださって。「任せなさい」「いいよ、やるよ」って言ってくださったので、本当にありがたかったです。
岩本アナ
その一言、大きいですよね。やっぱり応援してもらえないと踏み出しにくいというのも、男性育休の取得率がなかなか伸びない理由の一つでもあると思うので。職場の環境は大事ですよね、どんな声が多かったですか?
出川さん
主に女性から「奥様を休ませてあげてね」「家でちゃんと動きなさいよ」っていう声が多かったです。女性の方が大変さが分かっていらっしゃるので。
岩本アナ
いかに先読みして動いて、睡眠時間を確保するかとかね。そういったことでもかなり奥様の負担を減らせますよね。2週間だけでも。
出川さん
でも2週間じゃ全然足りないなと感じました。

2週間でも分かること

岩本アナ
2週間という期間ですが、育休を取っているのといないのとでは、マインド的に違うと思いますか?
出川さん
全然違うんじゃないですかね。新生児の時期って一瞬じゃないですか。僕はメロメロにされました(笑)。今もより可愛くなってきています。
岩本アナ
新生児の時に子どもにしっかり接したことで、育児が「義務感」ではなくなった感じでしょうか。
出川さん
子どものことを考えなきゃいけない、それが当たり前なんだなと変わりましたね。育休を取っていなかったらずっとどこか他人事だったかもしれません。失礼な言い方ですが。
岩本アナ
「俺は仕事をするから育児はやってよ」というマインドになっていたかもしれないですよね。 苦労っていうのは、実際やってみないと分からない。これから出川さんの後輩で育休を取りたい男性が出てきたら快く送り出しますか?
出川さん
むしろ行きなさいって。1か月、2か月育休取りなさいって言いたいですね。もう少し長く取りたかった、少しだけ後悔みたいな気持ちもあるので。
岩本アナ
育休の期間を少しずつでも長くしていくのが、トップバッターで育休を取った出川さんのこれからの役割だとも思います。

父親目線の誕生

岩本アナ
復帰後の社内の雰囲気はどうでしたか?
出川さん
特に変わりなく「おかえり」「大変だったでしょう」って声をかけていただきました。女性社員の皆さんと子ども関係の話が増えました。元々皆さん優しくて、普段からよく話しかけてくださっていたんですけど、そこに加えて子どもの話題が増えたのもあって。
岩本アナ
確かにそれはあるかもしれないですね。育休を取ったのが、そういう意味では社内のコミュニケーションの一つにもなっているんですね。育児トークができるみたいな。
出川さん
より社内のコミュニケーションが増えたというか。
岩本アナ
出川さんは普段取材に出たりもされていると思うのですが、お父さん目線みたいなのが出たりしますか?
出川さん
出ますね。例えば地域の子どもの発表会とか、小さい子どもがダンスしてるのとか見ると、すぐ涙してます(笑)。「がんばってる!」って。
岩本アナ
僕も取材に行くことがあるんですけど、やっぱり卒業式のニュースなどに行くと「一人でも多くの子どもを映してあげよう」と思ってしまいます(笑)。
父親目線というのは、これからも大事にしていきたいですよね。
出川さん
一人でも多く・・・むしろ全員映るように。テレビ見る時の「うちの子映ってる」っていうのを、ご家族に楽しみにしてもらいたいなという気持ちが、前からあったんですが、父親になってより大きくなりましたね。
岩本アナ
育休をきっかけに、その経験が仕事にも生かされてるということで、いいですね。もう男性育休推進派の人間になったんですね。
出川さん
はい!皆さんぜひ育休を取った方がいいと思います!
岩本アナ
僕も会社では男性育休社内第1号で。その後二人ぐらい取得者が出て少し広まりつつあるのを喜んでいます。出川さんもこれから後輩に子どもが生まれるとなると、少し声を掛けてあげますよね?あんまり言い過ぎるとハラスメントになってしまうので、明るくね。
出川さん
通りすがりに「育休取った方がいいよ」とかささやくぐらいで(笑)。

育休を取りやすい環境

岩本アナ
男性の育休取得を増やしていくためにはどんなことが必要だと思いますか?
出川さん
やっぱり上司や会社からの声掛けが一番大事なのかなと。なおかつ、そこでその人が抜けてもいいような体制作りじゃないかなと思います。
岩本アナ
そのあたりは石見ケーブルビジョンさんは整っておられましたか?
出川さん
もう、皆さんが「カバーするからいいよ」って快く受け入れてくれましたね。2週間は育児だけに集中できたので、本当にありがたかったです。そういった環境があるから、育児休業を取れるんだと思いますね。自分一人だったら本当にできないので、先輩方のおかげです。
岩本アナ
社風としても理解があったんでしょうか?
出川さん
このご時世なので「男性も育児する時代だよね」というムードはあるとは思いますが、中にはやっぱり育児は女性が主体という考えの方もいらっしゃるとは思います。
岩本アナ
そうですね。今、男性育休が広がりを見せているのも、僕達が育休を取れたのも「時代の後押し」もあると思うので。この波にうまく乗っていかないと一生男性が育休を取るチャンスがなくなってしまうように思います。
出川さん
そういった時代を総務部長が読んで「どうする?」と一番に声を掛けてくださったから、今回の育休は始まったんです。
岩本アナ
それは、帰ってきてからまた仕事頑張ろうって思いますよね。この人の下でだったらいい仕事ができる!って。そういう意味では会社にとっても育休を推進するのは、仕事のモチベーション向上にもつながりますよね。
出川さん
そうですね。仕事で恩返しをしたいなと思いますね。

安心して任せられると思ってもらいたい

岩本アナ
育休に入られる前に育児の勉強とかしていましたか?
出川さん
webで調べたりはしていました。けどやっぱりやってみないと本当に分からなかったです。例えば子どもって、骨が外れやすいみたいなのが怖くて。調べたことは知識として入ってるけれども、実践はできないっていう感じでしたね。恐る恐るやりました。
岩本アナ
ちなみに、奥様と家事とか育児について、生まれてからはバタバタするから事前に話とかされたんですか?どういうプランでやっていくか作戦を立てるというか。
出川さん
どうなんでしょう。バタバタし過ぎて記憶が抜けてるところが多いですけど(笑)。「手伝う」って言い方は違うかもしれないですけど、「お互いに手伝ってね」と。一緒の方向を向いてやろう、そして子どものことで悩んだら話し合おう、とは決めていました。
岩本アナ
おむつ替えとか動画では見るけど、新生児って本当に体が柔らかくて、少しひねっちゃったら死んでしまうんじゃないかみたいな不安がありますよね。最初は抱っこするのも怖くなかったですか?首もグラングランになっているし。
出川さん
怖いです。どうすればいいか分からなかったです。
今、当時の映像を見ると、こんなにおっかなびっくりだったんだなって。はたから見るのと自分でやるのって違うじゃないですか。
岩本アナ
自分ではできてるつもりだけど難しいですよね。男性も育児に参加する姿勢を見せないと、奥様はそれを見てイライラすると思うんですね。「なんでできないの、やろうともしないじゃない」って。実際に試行錯誤してる姿を見てもらうからこそ、奥様も一緒に子育てしてくれているなと感じるんだろうし、この人なら安心して任せられると思ってもらえたら嬉しいですよね。
出川さん
嬉しいですね。そうやって育児に積極的に参加したおかげか分からないですが、今子どもが懐いてくれて、帰るとすぐ駆け寄ってくれて。育児やって良かったなと思いますね。

赤ちゃんありきの生活

岩本アナ
育休の時の1日のスケジュールはどうでしたか?
出川さん
子どもの声で起きる時もありましたし、子どもが起きるまで寝てようっていう時もありましたし、子どもが起きる前に大人のご飯を作ったり、その時々で試行錯誤しながらやっていました。
岩本アナ
赤ちゃんが毎日同じタイムスケジュールで動いてくれるわけではないですからね。そのあたりは翻弄されながらですよね。
出川さん
その後は、もう何回もミルクをあげるので、常にずっとミルクのこと考えて過ごしてましたし、外出するのも大変で、ほとんど家の外に出てないんじゃないですかね。行くとしたら妻の実家、おじいちゃんおばあちゃんのところですね。
岩本アナ
そうなんですよね。新生児は特にお出かけする時の荷物が多いので。
出川さん
両手にリュックですから。
岩本アナ
おむつも持つし、おむつ替える時に敷くものも持つし、ミルクをどこでも作れるようにお湯を入れた水筒をリュックに入れたり。お出かけにエネルギーがいるって考えるとどうしても。
奥さん一人だと、こんな大きな荷物持って買い物が出来るかっていうことも思いますよね。
出川さん
出かけもしましたけど、早めに寝かせなきゃいけないので、16時にはもうお風呂。18時には寝る準備を終わらせるみたいな感じで。で、僕ら大人もそれに合わせて20時、21時には寝てたんじゃないですか。
岩本アナ
やっぱり赤ちゃんありきの生活に変わりますよね。
出川さん
夜起きてミルクをあげるなんて考えたことなかったので。
岩本アナ
それを妻一人だけに背負わせることになるって考えると怖いですよね。
出川さん
怖いですね。二人でも大変なのに、それを一人でさせられないですね、本当に。

福浜 秀利さん[代表取締役社長]

雇い主

水黒 真介さん[制作編成部・次長]

所属上司

目次
  • 地方の企業がすべきこと、できること
  • 働くモチベーションをつくるもの
  • 暮らしが楽しいと、仕事も楽しい

地方の企業がすべきこと、できること

岩本アナ
石見ケーブルビジョンさんで男性初の育休を取得された出川さんから、会社の全面的なバックアップがあったと伺いました。具体的に何か意識したことはありますか?
福浜社長
子育て支援はこれからの、特に地方の企業にとって重要だと思ったきっかけがあって。コロナウイルスもその一つだとは思うのですが、「都会から地方に帰って子育てしたい」という声をちらちら耳にするようになって。
出川夫妻もその1組で、二人ともたまたま弊社に入社してもらったのですが、実はその翌年も同じような状況でご主人だけ入社してもらったケースもあるんです。
「子育てを地方でする」のは、この地域が自然環境も含めて子育てにいい環境ということもあるし、行政の支援等もあってのことじゃないかなと思うんです。そうすると企業としても何かしないと。これはチャンスじゃないかな?と感じました。子育て支援を企業もしっかりやっていくことで、自然や生活環境も、行政支援もあって、三方全部良くなるんじゃないか、そう考えたのが育休を意識したきっかけですかね。
岩本アナ
移住者も増えるってことは、この地域も元気になるということですもんね。
福浜社長
おっしゃる通りですね。どんどん人口が減っていると考えた時に、今まで「求人=新卒」となる形が多かったんですけど、都会でスキルを積んだ方も地方で活躍する場があるといいなと。まだまだこれから脂が乗ってくる働き盛りの子育て世代を、企業として支援できればと思ったのがきっかけですね。
岩本アナ
石見ケーブルビジョンさんに出川夫妻が入社したことによって、子ども一人も増えて、地域の人口が合計三人増えたわけですしね。
出川さんが、水黒さんにはどんな話でもできて「育休取ったらいいよ」と背中を押してもらったと話しておられました。どんな話があったんですか?
水黒さん
子どもを早い段階で考えていることは分かっていたので、入社した時点で育休を取ることになるのは想定できていました。だからある程度心の準備はしていたんです。なので、そこに対して何か新たに言ったわけではないのですが、どんなプランがあるか?などの話を聞いたと思います。
岩本アナ
話を聞いたことによって組織として準備ができたというような。
水黒さん
そうですね。部署内だけじゃなく部署外にも影響があるので共有して、じゃあ今後どうする?この期間どうする?みたいな話を早めにできたのはありますね。
岩本アナ
早めに相談してもらうことによって、部署を横断して体制がとれたということですか?
水黒さん
そうですね。関係ない部署でも協力してもらったり、もしかしたら人手を借りるということもあり得るので、話し合いさせていただきました。
福浜社長
会社自体がワンフロアですから。
岩本アナ
なるほど。ワンフロアで全員の顔や様子を知って働ける会社だからこそ、体制を整えてあげたいと周りも思うんですかね。
福浜社長
そうですね。「整えてあげたい」というよりも「やるべき」と思っているんだと思います。そういう社風が県や市を通じて県外にも届けば、「そういう会社があるなら戻ろうかな」と考えるきっかけにもなると思います。
岩本アナ
いろんな会社が人手不足と言っている中で、育休が取れることがきっかけで入社してくれる人がいたら、会社としても喜ばしいことですよね。
福浜社長
そうですね。子育てを地方でしようと考えている方々は、育休が欲しいと思っていらっしゃると思うんですよね。だからこそ環境を整備しないと認めてもらえない、生き残っていけないのかなと思うんです。
岩本アナ
地方で子育てしたいと考える人が一定数いるから、そこに全力で取り組まないと置いていかれるということなのでしょうか。
福浜社長
そうですね。それにケーブルテレビという仕事で「地域の良さを再発見しよう!宝探ししよう!」みたいなことを生業としているわけじゃないですか。それなのに、我々が仕事に忙殺されて時間が無いのはいかんなと。それがきっかけですね。

働くモチベーションをつくるもの

岩本アナ
テレビ局って結構人手がいる仕事が多いじゃないですか。そういった中で、出川さんのケースでは二人、人手が減ることになり、大変なことはありませんでしたか?
水黒さん
そうですね。出川さんは制作の中で、育休に入る時には一人立ちしてもらっていたので、一人減るのは結構大きなことではありましたが、外部に委託できる人材もいたので。「この時期は少し外部予算をください」と予定を立て、前もって調整させてもらったという感じですね。
岩本アナ
やっぱり早めに相談してもらったから調整できたと。
水黒さん
そうですね。外部との兼ね合いもあるので、育休の希望などは早めに相談してほしいということは本人には伝えていたので、話してくれたのかなと。
岩本アナ
そこで話していたから、水黒さんと社長の間でも予算などの調整ができたんですね。
福浜社長
そういったところは、比較的余裕を持って予算化するようにしています(笑)。
もともと女性の1年の育休の方は、ほとんどの出産を経験した社員が取得していて、2年連続の社員もいます。1年育休をしっかり取って戻ってくると、その分ものすごく頑張ってくれるんですよね。それが今まであったので、男性も同じかなと。
岩本アナ
出川さんも、会社に恩返ししたいと思うようになったと言っておられました。育休の期間は会社で働く時間の中ではほんの一瞬じゃないですか。そこをサポートできるかで、働く側のモチベーションが変わると思うと、会社としてはやっぱり力を入れていかないといけないと感じますよね。
福浜社長
まさにそう思います。育休取得が一気に続けば、それはそれで大変だとは思うんですけど、そこはお互い様みたいなところがある。これから出産、結婚という若い世代もいますので。やっぱり一番大事なのは現場じゃないですか。我々経営陣がいくら「いいようにやってくれ」と言っても、現場がうまくいってないとどうにもならないので、そこは水黒さんが苦労しながらやってくれてると思うんです。
水黒さん
育休復帰後もですが、出川さんは入社した時から頑張ってくれていて、期待どおりの成長をしてくれているので、本当に入社してもらって良かったなと思っています。
岩本アナ
あと、出川さんは仕事を早く終わらせて、早く帰って子どもに会いたいと。それで仕事の効率も上がったみたいに話してました。プラスな面が多いですよね。
福浜社長
特に制作はクリエイティブな仕事なので、やればやるほど時間がたくさんかかってしまうと思うんですが、やっぱり限られた時間の中で求められているものをきちっと完成させるということは大事だと思いますし、そうする目的の一つに子育てがあるのも必要なことだと思います。
岩本アナ
会社としても調整は大変だけど、やる価値はあるということですね。
福浜社長
僕はチャンスだと思ってます。「都会から地方へ」という機運が高まってるような時期で、行政があれだけ支援をしているので、企業側もどんどん発信して、このチャンスを生かせるといいなと思っています。
岩本アナ
この流れでいい人材を、働き盛りの世代を確保していきたいということですね。
福浜社長
世代は若い方でも高齢の方でもいいんです。地方で、故郷で活躍したいという方は大歓迎です。

暮らしが楽しいと、仕事も楽しい

岩本アナ
家庭と仕事の両立に関しては、今の石見ケーブルビジョンさんの方針としてはどう考えてらっしゃるんですか?
福浜社長
やっぱりいい仕事をしようと思うと、家庭環境も良い状態であることが必要な要素だと思ってるので。弊社はワーク・ライフ・バランス委員会とか、健康増進委員会とかがあります。「健康や家庭の過ごし方も含めて、仕事を頑張れる大事な要素の一つ」という考え方ですね。楽しみがないと仕事したくないじゃないですか(笑)。
岩本アナ
「あの人は育休も取って、家庭もうまくやってる」と、これから入社する若い人達の希望にもなりますよね。育休も取れて、社員の健康のことも考えてくれる会社だと、一生働くビジョンも見えてきますよね。
福浜社長
そうですね。特に育児支援と介護支援の、2つが大きな問題だと思うんですよね。そこは明確に社員にも分かるような形で待遇を示すことを心がけています。
岩本アナ
メディア業界の企業がそこに乗り遅れるわけにはいかないですしね。
ちなみに従業員数はどのぐらいですか?
福浜社長
正社員が33名で、男女比は大体半々です。最近女性の方が増えてきました。
今まで主に男性が受け持っていた部署、制作もそうですけど、営業も今は女性が活躍してくれています。昔は営業って「男性じゃないとダメです」みたいな空気でやっていたのが、最近はほぼ半々です。
岩本アナ
素晴らしいですね!

出川 萌美さん

[制作編成部 制作課・主任]
優介さんの配偶者・同僚

目次
  • 「一緒に乗り越えた」経験の大きさ
  • 夫が「いてくれる」ことの安心感
  • 脱・ピンチヒッターお父ちゃん

「一緒に乗り越えた」経験の大きさ

岩本アナ
お子様のそう君は、現在1歳3か月?元気に育っておられますか?
出川萌美さん
すくすく育ってくれています(笑)。
岩本アナ
元々子ども好きで、早く欲しいと考えていたと、優介さんからお聞きしました。そういったことも含めて島根県に移住されたんですか?ご出身がこちらですか?
出川萌美さん
私は地元がこちら、浜田市です。そうですね。色々考えて、子育ても1つの理由です。
岩本アナ
環境的に、故郷での子育てはどうですか?
出川萌美さん
まず、いろいろ勝手が分かっているというのがいいなと思います。待機児童も、東京や埼玉にいた時だとすごくシビアだったので、安心してどこかには入れるというのもありましたし、実家が助けてくれるというのがすごく大きいですね。
岩本アナ
そうですよね。二人ともフルタイムで働くためには、ご実家のサポートがあるととても助かりますよね。
出川萌美さん
今日もちょっと子どもが体調を崩してお休みさせたんですけど、午前中は母が見てくれて。午後からは母も仕事があるので、私が迎えに行くといったふうに本当に協力してもらっています。
岩本アナ
そうですよね。僕は妻が鳥取市出身で、僕は大阪出身なので、初めての地で子育てをしたんですけど、やはり妻の実家に助けられたところがかなりあります。
出川萌美さん
やっぱり妻の負担が多い分、少しでも安心できるよう、妻の故郷で育てられるのはいいなと思いますね。
岩本アナ
今回、育休を優介さんも取られたということで、萌美さんとしてはいかがでしたか?
出川萌美さん
やっぱりありがたいなと思いましたね。物理的な負担もですけど、夫がいてくれるのは精神的にとても心強かったですし、「大変な時を一緒に過ごして乗り越える」というところでまた一つ信頼できるようになるというか。例えばニューボーンフォトを家で一緒に撮ることができて、写真を見返した時に「これ一緒に撮ったよね」っていうエピソードが増えるのは嬉しいなと思いました。
岩本アナ
お父さんが全然写真に出てこないとか、昔だとありますからね。
心身ともに、産後で一番大変な時じゃないですか。そんな時に全部一人でするのはなかなかね。ご実家の助けもあったとは思うんですけど、やっぱりそばにいてほしいと思う夫が気にかけてくれないと、精神的に参ってしまいますよね。
出川萌美さん
特に最初は、出産・子育てって試行錯誤の連続じゃないですか。そこを二人で一緒にできたというのは大きいかなと思います。
産前産後ってバタバタしていてあまり記憶がないのですが、優しくしてくれたことだけはよく覚えています。
出川優介さん
よかったです(笑)。
岩本アナ
(笑)。会社としてもかなり後押しがあったということで。そう感じましたか?
出川萌美さん
感じましたね。よくこれだけ忙しい環境で、快く送り出してくれたなと思いますし、立ち会い出産をしたいと言っていたので、そこに向けての仕事の調整もおそらく密に相談して進めてくださったんだなというのは、同じ会社だからこそ分かりますね。
岩本アナ
メディア業界というのはいつ何があるか分からないし、急に出てくる仕事もある中で、そういった調整をしてもらえるだけでもすごく感謝ですよね。

夫が「いてくれる」ことの安心感

岩本アナ
仕事とプライベートの子育てとメリハリをつけるためにも、やっぱり育休を男性が取るっていうのも必要なことになってきてますよね。
出川萌美さん
そうですね。会社に対しても、プライベートや子育てといったライフイベントを大事にしてくれる職場だと思うと、恩返しというか、頑張ろうという気持ちになりますね。
岩本アナ
家族の絆はどうですか?育休を取ってから。
出川優介さん
特に大きくは変わってないんじゃないんですかね。育休を取る前から何かあったらすぐ話し合いして、喧嘩してもその日のうちに仲直りするように努力していましたので、そういう意味では変わらないかなと思います。
岩本アナ
そのコミュニケーションの中で、いつぐらいから優介さんも育休を取ろうという話が出てきたんですか?
出川萌美さん
はっきりとは覚えてないんですけど、おそらく子どもが欲しいねと話した時、妊娠した時から「育休どうする?」と普段の会話の中で出てきたように思います。2020年ってちょうど制度が変わったくらいの時期だったと思うんです。だから、妊娠出産の情報を集めると、育休に関しての情報が出てくるので。そんなきっかけで育休について話したと思います。
岩本アナ
最新の情報をキャッチするテレビ局だからこそアンテナを張っていたと。
出川萌美さん
そうですね(笑)。日頃から。
岩本アナ
優介さんが、育休中に一番思っていたのは「萌美さんの負担を取り除いてあげたい。寝てほしい」だとおっしゃってましたが、どうでしたか?
出川萌美さん
もうバッチリですね。夜間も育休中はほとんど夫が見てくれた気がします。育休から復帰する時も、平日は私が夜担当するけど、土日は育休の時と同じように見てくれました。
岩本アナ
優介さんがいるといないで、萌美さんの安心感も違ったわけですよね。今日は優介さんがいてくれるからちょっと寝れそうとか。
出川萌美さん
あります。「今日1日頑張れば、旦那が帰ってくる」とか思ってましたね。残業がどうしてもあったりするので、今日は残業で遅いけど、明日は家族みんなでゆっくりできるなとか、そういうふうに思いますね。

脱・ピンチヒッターお父ちゃん

岩本アナ
仕事を早く終わらせて帰って、子どもの顔も見たいし、育児に参加したいと、優介さんもおっしゃってました。仕事のメリハリもついたと感じますよね。
出川萌美さん
いつも朝ご飯食べさせてくれるのは夫なので。
岩本アナ
そうですよね。女性の方が朝の準備で大変なことも多いので、朝助けてもらうのは大きいですよね。そう君もお父さんに抱っこされて安心してますね。
出川萌美さん
すごいですよ。場所見知り・人見知りなんですが、時々残業がある時に会社に連れてきたりしてたんですけど、じっとしてたんですがパパを見つけたら笑顔で走り出して。こんなふうに縦横無尽に歩き回るようになりました。
岩本アナ
子どもの反応を見ると、夫がいかに育児に参加しているかというのが分かるらしいんですけど、そう君もパパのこと大好きなんだなっていうのが伝わってきますね。
出川萌美さん
パパの仕事道具とかいっぱいあるでしょ。危ないよー。
出川優介さん
弁償しなきゃいけなくなるから壊さないでね(笑)。
岩本アナ
別の意味で、一生働く場所になっちゃう(笑)。
出川優介さん
何年働いたら弁償できるかな(笑)。
岩本アナ
これから後輩で妊娠とか、子どもができる男性がいたら「夫婦で育休取りな」とサポートもしていけますよね。
出川萌美さん
そうですね。長い期間が難しかったとしても、1週間、2週間でも、まとめてぱっと家族の時間をつくるというのはいいことだなって。
岩本アナ
今はもう、育児に仕事に全てが充実してるってことですね。これからますます、力入れて働かないとですね。
出川優介さん
一人だけの生活じゃないんで。守るべきものができたので、育てなきゃいけないですからね。
出川萌美さん
どうしても産休前とか、お母さんの方が育児の情報をたくさん集めると思うんです。それを育休期間に共有できたのは大きいなって思います。
岩本アナ
事務連絡だけじゃなくて、ちゃんと今日何があったかとか、そういった話ができる余裕にも繋がりますよね。
出川萌美さん
そう思います。ベースができていれば、少しの会話でもお互いに理解できると思うんです。
岩本アナ
確かに、指示だけになっちゃうと夫婦の時間も取れないですしね。育休というのは「ピンチヒッターお父ちゃん」を減らしていく。なんで私が全部指示しないといけないの?ってなりますしね。育休を別々に取るご夫婦もいると思うのですが、一緒に取るメリットは、一緒に大変な時期を共有できるってところだと思うんです。
出川萌美さん
そうですね。一緒に取らない選択も考えたんですけど、6月生まれだったんですが、4月入園だと希望の園に入れそうだったので、少し早めに育休を切り上げて入園させたんです。だからバラバラに育休を取る必要がなかったんです。
岩本アナ
都会だと保育園に入れないとかで、なかなか復帰できないという話も聞きます。僕もそれで育休は妻と別々で取ったんです。子どもが12月生まれで、妻が12月の段階で復帰して、4月入園の保育園が決まっていたんですけど、入園まで空白の期間が出るので。じゃあそこで僕が育休を、ということで、3月の慣らし保育まで取りました。
出川萌美さん
うちは慣らし保育がちょうど良い時期にあったので、2回目を考えなかった形です。産まれる月と、保育園に入れるかどうかっていうところですね。
岩本アナ
出川家は二人一緒に取って正解だったんだなと思いました。
出川優介さん
一緒じゃなかったら、僕は何もできなかったかもしれません(笑)。

取材日:2024年9月18日

岩本アナウンサーの取材後記

石見ケーブルビジョンでの取材を終え、「夫も妻も育児のスタートは一緒」ということを思い出しました。
第一子誕生は、どちらにとっても未知の瞬間の連続。試行錯誤しながら夫婦で育てていくものですが、おなかの子と10か月を共に過ごした母親のほうが、より強く責任感を感じることが多いように思います。だからこそ、男性の育休が大切なんです。

出川優介さんは、「子どものことを考えるのが当たり前になった」と意識の変化を口にしていました。
育休は、育児を“義務”ではなく“自分事”にする貴重な時間。会社側も福浜社長や上司の水黒さんを中心に積極的に育休を推進し、職場全体で支え合う体制を整えていました。
その環境があるからこそ、出川さんも「将来、後輩にはもっと長く育休を取ってもらえるように」と考えるようになったのでしょう。

また、男性育休をはじめとする働きやすい環境づくりは人材確保や離職防止につながります。地方企業にとって、これは大きな強みになると改めて感じました。

取材の最後、妻の萌美さんが「夫がいてくれることで精神的に支えられた」と話してくれたのが印象的でした。夫婦で一緒に大変さも喜びも分かち合うことで、家族の絆はより深まる――出川家族の姿から、男性育休の本当の価値を実感しました。